ストーリーテリングとは?ビジネス活用の3つのフレームワークと事例
あなたは、「顧客とより強固な結びつきを作りロイヤルティを高めることで、あなたの商品やサービスを選択してもらい、長期的な売上につなげたい」と考えたことはありませんか?
あなたの身近にも、「コーヒーを飲むならスターバックス」「PCを買うならMac(アップル)」「テーマパークに行くならディズニーランド(ウォルト・ディズニー・カンパニー)」といった具合に、強いこだわりをもってリピート購入を繰り返している特定企業の商品やサービスがあるはずです。
これは競合他社がたくさん存在する中でも、指名で特定企業の商品やサービスが選択されていることを意味します。
あなたの商品やサービスにも、多くの顧客にファンになってもらい、長い期間にわたってお付き合いいただければ、結果的に大きな売上につなげられるはずです。
そんなあなたにおすすめしたい方法が、本記事でご紹介する「ストーリーテリング」です。
ストーリーテリングの方法をビジネスに活用できれば、顧客と強固な結びつきが生まれ、あなたの商品やサービスが指名でリピート購入されるようになります。
実は、前述したスターバックス、アップル、ウォルト・ディズニー・カンパニーのような企業も、顧客が意識しているか意識していないかに関わらず、企業自体が、また各商品やサービス自体が強固なストーリーを持ち合わせています。
そのストーリーはわかりやすい場所で表現されている場合もあれば、ふとした瞬間にさりげなく認知されるよう演出されていたりします。
また、そのストーリーが様々なエピソードとともに、長年にわたって延々と顧客に語り継がれている場合もあります。
そこで本記事では、ビジネスでも活用しやすいストーリーテリングの3つのフレームワークをご紹介します。
ストーリーテリングが活用できると、固定的なファンが生まれやすくなり、あなたのビジネスが成功しやすくなります。
ぜひ、こちらでご紹介するストーリーテリングの3つのフレームワークを参考にしてみてください。
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ストーリーテリングとは?
ビジネスにおけるストーリーテリングとは、あなたのビジネスを「物語」を通して表現することです。
具体的には、あなたの会社や商品、そして顧客のメッセージをストーリー化(物語化)することによって、共感を呼ぶことです。
その結果として、顧客との強固な結びつきを生み出し、ロイヤルティを高め、結果的に長期的な売上貢献につなげることができるようになります。
そもそも、私たちはなぜ本を読んだり、映画を観たり、歌を聴いたりするのでしょうか。
それは、そこにストーリーが存在するからです。
ストーリーはエンターテイメントと言い換えることができます。
そして、ストーリーは、私たちがどのように行動すべきかの知識やインスピレーション、そして動機を与えてくれます。
これらはいずれも人に行動を促すという意味で、共通点があります。
ビジネス上の観点で言うならば、顧客の購買意欲を生み出し、ブランドに愛着心をもってもらい、何度もリピート購入してくれるような行動、と言えるでしょう。
ストーリーに関しては、本ブログでも「ヒーローズ・ジャーニー(神話の法則)をビジネス活用する5ステップ」といったテーマとして取り扱ったことがあります。
実は、以前からストーリーテリングの重要性はマーケティング業界の中で強調されていましたが、ここ最近、米国を始めとして、あらためてこの手法が注目されるようになってきました。
なぜかといえば、ここ数年の間で世界的にソーシャルメディアの普及率が一気に高まってきたことが挙げられるためです。
こちらにソーシャルメディアの世界的人口について説明したインフォグラフィックがありますので、ご紹介します。
まず、以下のようなデータがあります。
- 全世界でソーシャルメディアのユーザーは30億人存在して、これは世界人口の45%になる
- 21億人がソーシャルメディアアカウントを持っている
- 17億人が頻繁に活用するソーシャルメディアアカウントを持っている
出典:The Growth of Social Media v 3.0 [Infographic]
このデータを見ると、世界的にソーシャルメディアが普及している現況がわかります。
また、以下のデータは、2010年から2015年にいたる各ソーシャルメディアの伸び率を表しています。
出典:The Growth of Social Media v 3.0 [Infographic]
こちらのデータを見ると、いかに主だったソーシャルメディアが急激に普及しているかが理解できます。
たとえば、2015年時点で、Facebookは15億人ユーザー、YouTubeは10億人ユーザー、インスタグラムは4億人ユーザーといった数字を発表しており、全体平均でも右肩上がりであることがわかります。
伸び率が高いのは「ソーシャルメディア上でもっとも強力なメディア」と言われるFacebookですが、世界的に、自分の嗜好に合ったソーシャルメディアを使うというトレンドは続いていくと予測できます。
スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスの普及に合わせて、既存のマスメディアよりもソーシャルメディアに触れる時間が多い人が増えていく可能性は高いと言えます。
ソーシャルメディアの普及は何を意味するか?
ここで大切なことが、ソーシャルメディアの本質を把握しておくことです。
ソーシャルメディアの本質とは、「拡散性」にあると言われています。
一般的に、どのソーシャルメディアにも、ネット上での拡散を促す仕組みが整っています。
Facebookの「いいね!」や「シェア」ボタンは身近でわかりやすい事例と言えます。
あなたも、ソーシャルメディア上で流れてきた情報に共感し、ついシェアをしてしまったという経験があるのではないでしょうか。
優れたストーリーは拡散する
今後ますますソーシャルメディアの普及が予測される将来では、この拡散性を前提にあなたのマーケティングを展開していく必要があります。
優れたストーリーを持っている企業や個人は、この拡散性の波に乗れるようになります。
そこで重要なことが、あなたのビジネスをストーリー化して伝える技術を知っておくことです。
もしもあなたがあなたの会社や商品、顧客に関する優れたストーリーを持っていたら、それはネット上で拡散する可能性が高いと言えます。
それは結果的に、あなたのウェブサイトへのトラフィック数を増やすだけでなく、逸話として顧客に語り継がれる物語にすることもできるのです。
ストーリーが人間の脳に与える影響
出典:Fast Company
ここで、Fast Companyが発表したインフォグラフィックの一部をご紹介します。
こちらのインフォグラフィックでは、ストーリーテリングのポイントが紹介されています。
こちらを要約してお伝えすると、脳科学的な見地からも、「単純な情報提供」よりも「ストーリーを通したメッセージ」のほうが、人にインパクトと影響力を与え、記憶に残りやすい傾向があるそうです。
ストーリーは、単に情報を無機質的な情報としてではなく、顧客の感情を動かし、さらにそのストーリーを他人に伝えていく情報に変える力があるのです。
ストーリーテリングの好例-スティーブ・ジョブズのスピーチ
ここで、ストーリーテリングの好例として、スティーブ・ジョブズのスピーチをご紹介します。
彼がスタンフォード大学でおこなった卒業生へ向けたスピーチでは、マッキントッシュ(Mac)が生まれたストーリーを披露しています。
なお、このスピーチは上記のYouTube動画だけでも1,000万回を超える再生回数を誇り、国境を越えて、彼の物語は世界中に広まっていきました。
実際、彼のストーリーはYouTubeだけでなく、その他のソーシャルメディアを通して、瞬く間に多くの人たちに拡散していったそうです。
本スピーチは、以下の3つの構成から成り立っています。
- 「点と点をつなげる」(CONNECTING DOTS)
- 「愛と喪失」(LOVE AND LOST)
- 「死について」(ABOUT DEATH)
どれも素晴らしく示唆に富む内容をストーリー化して伝えていますが、本記事では、「点と点をつなげる」(CONNECTING DOTS)のストーリーについて、その一部を引用してご紹介します。
スティーブ・ジョブズは、リード大学を半年で退学しましたが、本当に辞めるまで18ヵ月にわたって大学に残り、カリグラフィ(※)の授業を聴講していました。
リード大学は、当時としてはおそらく米国内最高水準のカリグラフィ教育を提供する大学だったようです。
※カリグラフィとは、西洋において、日本における書道のような文字を美しく見せる手法のこと
以下にスピーチから引用のうえ、彼のストーリーをお伝えします。
私は退学した身。
もう普通のクラスには出なくていい。
そこでとりあえずカリグラフィのクラスを採ってどうやったらそれができるのか勉強してみることに決めたのです。
セリフをやってサンセリフの書体もやって、あとは活字の組み合わせに応じて字間を調整する手法を学んだり、素晴らしいフォントを実現するためには何が必要かを学んだり。
それは美しく、歴史があり、科学では判別できない微妙なアートの要素を持つ世界で、いざ始めてみると私はすっかり夢中になってしまったのです。
こういったことは、どれも生きていくうえで何ら実践の役に立ちそうのないものばかりです。
だけど、それから10年経って最初のマッキントッシュ・コンピュータを設計する段階になってこのときの経験が丸ごと私の中に蘇ってきたのです。
そして、私たちはそのすべてをマックの設計に組み込んだ。
そうして完成したのは、美しいフォント機能を備えた世界初のコンピュータでした。
もし私が大学であのコースひとつ寄り道していなかったら、マックには複数書体も字間調整フォントも入っていなかっただろうし、ウィンドウズはマックの単なるコピーに過ぎないので(笑)、パソコン全体で見回してもそうした機能を備えたパソコンは地上に1台として存在しなかったことになります。
もし私がドロップアウト(退学)していなかったらあのカリグラフィのクラスにはドロップイン(寄り道)していなかった。
そして、パソコンには今あるような素晴らしいフォントが搭載されていなかった。
もちろん大学にいた頃の私にはそんな先々のことまで読んで“点と点をつなげてみる”ことなんてできませんでした。
だけど10年後振り返ってみると、実にハッキリしているのです。
繰り返します。
未来に先回りして“点と点をつなげる”ことはできない。
できるのは、過去を振り返ってつなげることだけなのです。
だからこそバラバラの点であっても、将来それが何らかのかたちで必ずつながっていくと信じなくてはならない。
自分の根性、運命、人生、カルマ…何でもいい、とにかく信じること。
点がつながって道となることを信じることで、心に確信を持てるのです。
結果、人と違う道を行くことになっても、信じることですべてのことは、間違いなく変わるのです。
※日本語字幕のついた動画は、こちらからご覧になれます
「スティーブ・ジョブズ 伝説の卒業式スピーチ(日本語字幕)」
スティーブ・ジョブズは、彼自身の実体験をもとにしたこのスピーチで、卒業生たちに勇気を与えるストーリーを語っています。
この一節だけを聞いても、どのようにマッキントッシュ(Mac)が生まれたのか、その経緯を詳しく知ることができますし、さらに私たちが人に伝えたくなるような忘れがたいメッセージが含まれています。
このように、物事をストーリー化して伝えるメリットは計り知れません。
ストーリーテリングの技術を身につけるメリット
ここで、あらためてストーリーテリングの技術を身につけるメリットを考えてみましょう。
たとえば、前述したスティーブ・ジョブズのスピーチを通しても、以下の4点が挙げられます。
1. あなたのパーソナリティを顧客に伝えることができる
スティーブ・ジョブズのスピーチは、彼のパーソナリティを伝えるには十分なメッセージでした。
彼の大学生活において、どのような事柄に興味を持ち、どのような生活を送っていたのか、具体的なパーソナリティが理解できます。
あなたが企業の代表者であれば、会社を起業するまでにいたったストーリーや商品を開発するまでの苦労などをストーリー化して語ることによって、あなたのパーソナリティを伝えることができます。
2. あなたの競合企業に打ち勝つことができる
このスピーチ自体がアップルの業績を上げたことは証明できませんが、このスピーチがきっかけでアップル製品に注目し、実際に使用し、愛用するようになった人は多いと言われています。
あなたが作ったストーリーが顧客に好まれていれば、同様の仕様をもつ他の企業と差別化され、価格以外の評価によって選択してもらうことができるようになります。
3. 顧客の感情を盛り上げることができる
このスティーブ・ジョブズのスピーチを聞いて、感動して涙した人は多いと言われています。
優れたストーリーを語ることができれば、顧客の感情を動かすことができます。
購買心理学の世界では、「人は感情で購入を決定し、理論で正当化する」という名言があります。
これは、商品を購入してもらうための有効な方法として、理詰めで説得するよりも、先に感情を動かすことの重要性を説いています。
そのため、もしもあなたが顧客の感情を動かすことができれば、その瞬間に商品を購入してもらうことも十分可能になります。
4. 顧客に頻繁に思い出してもらうことができる
単なる商品説明や会社の説明は記憶に残らないかもしれません。
しかし、素晴らしいストーリーは、記憶に残ります。
そのため、あなたに素晴らしいストーリーがあれば、顧客が問題を解決するために何かが必要になったときに、真っ先に思い出してもらえる可能性があります。
競合が多い企業は価格競争に陥りがちですので、ストーリーを用いることによって、顧客に頻繁に思い出してもらえることはとても大切になります。
あなたが自分のビジネスにおけるストーリーを語ることができれば、これら4つのメリットを十分に顧客に提供しながら、あなたのビジネスを伸ばしていくことが可能になります。
なお、スティーブ・ジョブズは世界トップクラスのプレゼンターであり、ストーリーテラーと言われていました。
彼と同じようなストーリーを語ることは難しいかもしれませんが、一定のパターンにしたがうことで、優れたストーリーを語ることは可能になります。
ストーリーテリングはどのように表現すべきか?
ビジネス上のストーリーテリングの表現方法について、米国のトップマーケターであるニール・パテル(Neil Patel)とリティカ・ピューリ(Ritika Puri)は以下のようなヒントを与えてくれています。
出典:How to Tell Your Brand’s Story
- あなたの会社はどのように生まれたのか
- あなたの会社のチームが毎日情熱的に働く動機は何か
- あなたの商品はどのように生まれたのか
- どのような顧客が、なぜあなたの会社のブランドに対して価値を感じるのか
- あなたの会社の中で働く人々がクリアに実感できるもの
- あなたの会社の組織全体のチームが愛情をもてるもの
- あなたの会社において、あなたは何者なのかを理解できるもの
- 直感的に理解しやすいもの
- ウェブ上におけるあなたの存在を強調するコンセプト
それでは、あなたがビジネス上のストーリーを作るとき、どのようにしていけばよいか、実例を挙げながら見ていきましょう。
ストーリーテリングをビジネスで活用する3つのフレームワーク
こちらでは、あなたがストーリーを作るための3つのフレームワークについて解説していきます。
書籍『MADE to STICK』(日本語版: 『アイデアのちから』) の中で、著者であるチップ・ハースとダン・ハースは、ストーリーテリングの型として活用できる3つのストーリー・プロットを伝えています。
出典:『MADE to STICK』Chip Heath (著), Dan Heath (著)
出典:『アイデアのちから』チップ・ハース (著), ダン・ハース (著)
ちなみに、プロット(plot)とは、ストーリーの要約のことであり、いわば「ストーリーのフレームワーク」とも考えることができます。
著者が語るには、その3つのプロットとは以下のとおりです。
- チャレンジ・プロット
- コネクション・プロット
- クリエイティビティ・プロット
これら3つのプロットについて、順番に事例を交えて解説していきます。
1. チャレンジ・プロット
こちらの「チャレンジ・プロット」では、アンダードッグ(underdog:英語で「勝ち目のない格下ボクサーのような弱者」のこと)、いわゆる「弱者」が主人公になります。
それまで弱者とされていた主人公が、何か打ち勝ちがたい、偉大なチャレンジに挑んでいくようなストーリーになります。
なぜ、このようなストーリーは人を惹きつけてやまないのでしょうか。
それは、私たちの誰もが、そのストーリーで弱者とされていた主人公が最終的に勝利したとき、圧倒的に共感するためだと言えます。
あるいは、主人公と同じように私たちも逆境に打ち勝てると感じさせてくれるからではないでしょうか。
ここで、チャレンジ・プロットの代表とも言える映画、『ロッキー』のストーリーをご紹介します。
映画『ロッキー』をめぐる2つのストーリー
出典:Wikipedia
映画『ロッキー』のストーリーが秀逸なことは誰もが知っているはずです。
フィラデルフィアに暮らす三流ボクサー、ロッキー・バルボアがアポロ・クリードという世界チャンピオンと対戦するチャンスをつかみ、様々な苦労を乗り越え、不屈の闘志をむき出し、最後はボロボロになりながらも勝利するストーリーです。
このストーリーは非常に素晴らしいものですが、実は、この作品の「製作過程」自体が有名なストーリーだったことはご存じでしょうか。
この製作秘話とも言えるもうひとつの実話ストーリーをご紹介しますので、ご覧になってみてください。
『ロッキー』製作にいたる背景
当時、映画のオーディションに50回以上落選していたスタローンは、用心棒などの仕事で日々の生活費を稼いでいました。
長い極貧生活を送っていたある日、彼は世界ヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー」戦のテレビ放送を観戦しました。
アリは当時世界最強と言われていたのに対し、ウェプナーはスタローン同様、繰り返す転職の中で日銭を稼いでいた格下のボクサーでした。
誰が見ても勝ち目がないウェプナーでしたが、予想外の善戦を展開しました。
試合はアリが勝利したものの、ウェプナーの繰り出したパンチがアリのわき腹を直撃しダウンを奪い、対戦後に「二度と対戦したくない」と言わしめたそうです。
モハメド・アリ対チャック・ウェプナーの対戦
出典:Wikipedia
スタローンは「アリをダウンさせたその瞬間、ウェプナーは偉大なボクサーとなり人々の心に永遠に刻まれる」と感じ、この出来事をもとに、わずか3日で脚本を書き上げ、プロダクションに売り込みました。
ただ、最初はどのプロダクションも見向きもしてくれず、極貧時代は続いたそうです。
生活苦のため愛犬を売る
ここで、彼の極貧時代を象徴するエピソードをひとつご紹介します。
この時期、あまりの貧乏生活で、スタローンの手元には106ドルしかなかったそうです。
そこで、彼は当時唯一、スタローンを無条件に愛してくれていた愛犬のバッカスをたったの50ドルで売ることになってしまい、大泣きしたそうです。
本人も当時を振り返り、「セブンイレブンの前でペットの犬を売らざるを得なかった」と述べています。
お金も底を尽き、最愛の愛犬も見ず知らずの人に売って僅かな生活費に充てざるを得ないという、まさに人生の最底辺をさまよっていました。
どん底から人生最大のチャンスに出会う
ところが、その約1週間後、彼に人生最大の転機が訪れました。
あるプロダクションがスタローンの脚本を気に入り、7万5千ドルという当時の脚本料としては破格の値をつけたそうです。
ただし、製作の条件として「主演にポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、アル・パチーノといった有名スターを起用する」ことを挙げて譲りませんでした。
それに対して「貧乏とはうまくつきあうことができる」スタローンも脚本料に目を眩ませず、自分が主演を兼任することに徹底的にこだわったそうです。
結果として、双方の長きにわたる交渉の末、以下の条件のもとで製作が開始されました。
- ギャランティーに関しては、監督は普段の半分、スタローンは俳優組合が定める最低金額
- プロデューサーはなし
- 製作費はテレビシリーズ1本分(約100万ドル)
- 36万ドルまで高騰した脚本料を2万ドルに減額
なお、この契約が決まってから、スタローンは1週間前に売った愛犬を3日間かけて探し続け、飼い主を見つけることに成功したそうです。
買い戻したスタローンの愛犬、バッカスとともに
しかし、50ドルで売った愛犬を150ドルで買い戻すと言ったところ、飼い主に断られたそうです。
交渉の結果、最終的に3,000ドルと、その飼い主を『ロッキー』へのチョイ役で出演させることを許諾することで、買い戻しに成功したそうです。
経費を徹底的に節約
『ロッキー』の製作費は極めて限られていたため、撮影の際には経費を徹底的に節約したそうです。
まず、観客役のエキストラを「フライドチキンを配布する」というチラシで募集しました。
しかし、そのほとんどが素人のため、撮影最終盤では統制を保てず、予定していたラストシーン(興奮した観客がロッキーを担いでいくというもの)を撮影できなかったそうです。
なお、エキストラには節約のためスタローンの家族たちも出演したそうです。
弟のフランク・スタローンは序盤に登場する街頭で歌を歌ってたむろする若者たちの一員として、父のフランク・スタローン・シニアはゴングを叩く役として出演しました。
実はこの映画には、前述したスタローンの愛犬・バッカスも出演しています。
スタッフにも同様の節約がなされ、当時のスタローンの妻・サーシャはスチル写真のカメラマンとして参加していたそうです。
監督のアビルドセンのギャラは相場の半額で、プロデューサーのウィンクラーは自身の家を抵当にして予算を集めたといいます。
映画の反響
製作後、スタローンは母を伴って映画監督を招いた試写会を開きましたが、監督たちはまったくの無反応で、終了すると足早に退席したそうです。
これに深く失望したスタローンは母に「僕はやるだけやったよ」と答え、帰ろうと席を立ちました。
すると出口前で退席した監督たちが集まっており、万雷の拍手で迎えられたので、スタローンはとても感動したといいます。
公開当初、無名俳優の書いた脚本をB級映画出身の監督が製作するという背景から、作品に対する周囲の視線は冷ややかでした。
しかし、映画はそのストーリーの秀逸さから観客の心をつかみ、瞬く間に全米だけで1億ドル(約100億円)の興行収入を記録しました。
そして、1977年の第49回アカデミー賞で「作品賞」を獲得するなど、国内外の映画賞において群を抜く数の映画賞を受賞したのです。
第49回アカデミー賞で見事「作品賞」を受賞
映画の主人公ロッキーは、生き甲斐を持てずにさまよい続ける日々から一夜にして栄光をつかみました。
同様に、主演と脚本を担当したスタローンも、この作品の大ヒットで無名俳優から一躍スターダムに上り詰めるという、二重写しの快挙となりました。
これが、製作過程における、もうひとつのストーリーです。
映画自体のストーリーと、映画の製作にいたるストーリーの2つともがチャレンジ・プロットに沿っているのがおわかりでしょうか。
このアンダードッグ(弱者)が大きな目標に立ち向かい、多数の困難を乗り越えながらも勝利する、といったプロットは誰もが共感する定番的なストーリーです。
ワービー・パーカーの事例
米国で人気の高いオンラインアイウェアショップのワービー・パーカー(WARBY PARKER)は、このチャレンジ・プロットに沿ったストーリーテリングに成功し、支持を集めています。
出典:WARBY PARKER
アイウェア業界というものは、あるひとつの多国籍企業が世界全体のメジャーなアイウェアブランドの生産をおこなっているそうです。
そのため、価格は仲介業者である彼らにとって非常に有利なものになっており、逆に消費者側にとって不利になることが多い状態だったそうです。
ワービー・パーカーは、このような業界の寡占状態を打ち破るようなチャレンジを試みることをミッションとしました。
いわば、後発組の弱小企業(アンダードッグ)が、大きな利益を享受していた大企業に立ち向かう、といった構図を作ったのです。
そのメッセージとストーリーを、ソーシャルメディアを通して拡散し、多くの顧客からの支持を得てきました。
同社が販売するメガネの価格は通常、レンズとフレームをあわせて95ドル~です。
100ドル以下という価格は、生産から小売のあらゆるプロセスを自社でおこない、マーケティングや販売をオンラインでおこなうことで可能になったものです。
仲介業者を中抜きすることで、同社はより高品質なメガネを作ることができるようになったそうです。
ワーピー・パーカーの共同創業者であるニール・ブルメンサル
出典:WIRED
「消費者に直接販売するというやり方で、仲介業者を中抜きでき、浮いたコストを価格に反映している」「このやり方で従来は多国籍企業に渡っていた膨大な金額を、一般の人々に回すことが可能になった」と、ワービー・パーカーの共同創業者、ニール・ブルメンサルは話します。
このように、理想に燃えるスタートアップ企業が、それまで最終小売価格を高くしていた原因である大企業に立ち向かっていくといったチャレンジ・プロットは、消費者の共感と支持を呼びます。
これは、私たちそれぞれの業界でも使用できる可能性があります。
ぜひ、あなたのビジネスにおいて、こちらのチャレンジ・プロットが実現できないか考えてみてください。
2. コネクション・プロット
次に、「コネクション・プロット」についてご紹介します。
こちらは、「人と人」や「人と社会」とのつながりを重視するストーリーを打ち出すプロットです。
このプロットの中では、顧客が様々なコミュニティや人々と接することができるプラットフォームを提供することや、その企業が社会全体のつながりを促進するような媒体になることを主張します。
アドナムス・サウスウォルドの事例
イギリスの海岸線の町、サウスウォルドに、アドナムス・サウスウォルド(ADNAMS SOUTHWOLD)というビール醸造会社があります。
こちらは1872年創業の歴史あるブルワリーで、ビールの醸造やパブの経営をメインとしながらも、3つのホテル経営やスピリッツの醸造、輸入ワインの販売などをおこなっています。
アドナムス・サウスウォルドは、「一連の企業活動を通して、社会にポジティブな影響を与える」というメッセージを発信しています。
具体的には、地球環境に負担をかけないような製品の製造方法にこだわったり、ビールの醸造やホテルの経営に必要な資源を地元の農家や企業から調達する、といったことです。
また、製造過程で生まれた廃棄物をバイオガスに転換するよう試みたり、屋上緑化をおこなってエネルギー効率を高めたり、地元の海岸を清掃するなど、様々な活動に取り組んでいます。
彼らは、資源の調達や環境問題への真剣な取り組みを通して、地域社会やコミュニティへの貢献をおこなうことをポリシーと定めてきました。
そして、これらのメッセージを、動画をはじめとする様々な媒体でストーリーとして発信することにより、アドナムス・サウスウォルドは大きな支持を得られるようになってきたのです。
アドナムス・サウスウォルドのマーケティングディレクターであるエマ・ヒバート(Emma Hibbert)は、「ブランドのストーリーがあると、競合他社との比較対象から別格として認識されるようになる」といいます。
アドナムス・サウスウォルドはビール醸造所の見学ツアーもおこなっていますが、こちらのツアーは非常に人気があるそうです。
そして、そのツアーの現場でも、彼らのストーリーを繰り返し語ることによって、強い感情的なつながり(エンゲージメント)が生まれています。
その結果として、新たなストーリーの語り手を増やし、リピートの売上が増えることを実感しているそうです。
特に、アドナムス・サウスウォルドの活動は誰が聞いても共感できるメッセージのため、多くのファンを増やしていると言えます。
もしもあなたの会社がアドナムス・サウスウォルドのように、地域社会や社会全体に対して貢献する活動をおこなっているのであれば、このようなストーリー作りは中長期的に大きく売上に貢献するはずです。
3. クリエイティビティ・プロット
最後に、「クリエイティビティ・プロット」をご紹介します。
これは、ある天才発明家が、それまでの常識を覆すような、まったく新しい発見を公表することに似ています。
具体的には、その新しい発明や発見が既存の常識を破壊し、まったく新しい基準を確立するまでにいたるストーリーを語ることです。
このようなストーリーを聞くと、私たちも天才発明家と同じようになれたような気持ちになり、気持ちが高揚してきます。
その結果として、顧客もぜひその一部に関わりたい、と思ってもらえるようになるのです。
こちらでは、クリエイティビティ・プロットに関する事例をご紹介します。
アサナの事例
出典:Asana
アサナ(Asana)は、2008年に米国カリフォルニアで生まれた企業です。
共同創業者のダスティン・モスコヴィッツとジャスティン・ローゼンスタインは、この企業を創業するまでは、Facebookで従業員の生産性を高める仕事をしていたそうです。
ちなみに、ダスティン・モスコヴィッツは、トップのマーク・ザッカーバーグを含む4人のFacebook共同創業者の一人でもあり、2012年の世界最年少ビリオネア(個人資産10億円以上を表す億万長者)になった人物です。
なお、2016年時点において、彼はまだ32歳にも関わらず、総資産は92億ドル(約9,200億円)もあるそうです。
若き天才億万長者 ダスティン・モスコヴィッツ
出典:Wikipedia
現代のオフィスでは、実に多くの時間がEメールの対応に費やされています。
届いたEメールに返信をしたり、転送をしたりしますが、この活動はコミュニケーションやアイデアのディスカッションに貢献しにくいと言われています。
彼らは、Facebookの開発に関わっていたとき、より効率的に共同作業を進めることのできるツールを求めていたそうです。
なお、開発のもともとのきっかけは、前職において、とんでもなく頭の良い人たちが、重要ではない仕事でつまずいていたことにあったそうです。
彼らは、「仕事のための仕事」、つまり関わっているプロジェクトに関する過去の情報の確認、余計な情報ばかり書かれた長々としたEメールスレッドの確認、互いの仕事の状況を確認するといった作業に多大な時間を費やしていました。
そんな状況を目の当たりにして、2人はフラストレーションを感じるようになっていました。
最初はFacebook社内で「タスクス(Tasks)」という社内ツールを開発し、それを運用していたのですが、その後、自分たちがこの仕事を専業でおこなうべきだ、という考えにいたったそうです。
そこで、ダスティン・モスコヴィッツとジャスティン・ローゼンスタインは、新しいプロジェクト管理ツールを開発し、「アサナ(Asana)」と名付けました。
これは、チームで仕事をおこなうときのタスクの割り振りやディスカッションを、Eメールなしで実現できる画期的なツールです。
このツールを使うことによって、Eメールほど時間を取らないにも関わらず、タスク管理を含めて、仕事を進めるうえで生産性の高いコミュニケーションが取れるようになりました。
出典:Asana
このサービスをスタートさせた後、2人は懸命に仕事をして、初期にアサナを導入したチームたちを素晴らしい成功に導いたそうです。
未来の顧客は、既存の顧客が自社のミッションを追求するのにどれだけアサナが役に立ったかを耳にすることで、自分たちも使ってみたいと思うようになります。
Eメールでのコミュニケーションでは実現できなかったクリエイティブな利便性を強調したストーリーを語ることによって、瞬く間に彼らのサービスは支持されるようになっていきました。
その結果として、アサナはセールスフォースやウーバーのような大企業も活用する人気ツールとなったのです。
もしもあなたの商品やサービスが業界の中で独創性があるなら、ぜひこのクリエイティビティ・プロットのストーリーを語るとよいでしょう。
まとめ
本記事ではストーリーテリングの方法として、以下のような3つのフレームワークをご紹介しました。
- チャレンジ・プロット
- コネクション・プロット
- クリエイティビティ・プロット
このフレームワークを活用すれば、ヒーローズ・ジャーニー(神話の法則)のような「ストーリーの黄金則」とはまた異なる視点で、あなたのストーリーを作っていただけるはずです。
冒頭でお伝えしたとおり、ソーシャルメディアが発達している現代では、優れたストーリーは一瞬にして世界に拡散していきます。
ぜひ、あなたのストーリー、あなたの会社のストーリー、あなたの商品のストーリーを作り、市場に公開してみてください。
ストーリーを公開していく際には、以下のような方法が効果的です。
- ホームページへの掲載
- ブログへの投稿
- Facebook(プロフィールページ・Facebookページ)への投稿
- YouTubeへの(動画)投稿
- ステップメールでの紹介
- 広告での紹介
- 電子書籍での紹介
あなたにとって最適なメディアでストーリーを継続的に伝えていくことで、中長期的に大きな売上に貢献するようになるはずです。
なお、セールスをおこないながら同時にストーリーテリングを成功させる方法として特に有効な方法は、「ステップメールでのストーリーテリング」「ウェビナー(またはオンライン動画)でのストーリーテリング」です。
具体的には、あなたの商品やサービスに興味を持ってくれた見込み顧客のメールアドレスに、何本ものステップメールを通して、ストーリーテリングをおこなうのです。
また、ステップメールの過程でウェビナー(またはオンライン動画)でのストーリーテリングを取り入れるのであれば、映像の最初に、あなたのストーリーテリングをおこなうのです。
まだあなたのことを十分に知っていない状態であれば、あなたが語るストーリーを知ることによって、共感を持ちながらその先のセールスを受け入れてもらえる可能性が高まります。
そのためにも、まずは本記事でご紹介したフレームワークの1から3のいずれかを選択して実践してみることをおすすめします。
なお、本記事のテーマに興味をお持ちいただけたなら、ぜひ以下の記事もお読みになってみてください。
「ヒーローズ・ジャーニー(神話の法則)をビジネス活用する5ステップ」
「売れるコピーライティングの書き方がわかる!5つの原則と推薦本9冊」
「売れるウェビナーの作り方21ステップ(2時間で5,364万円の販売実績)」
きっと、あなたのお役に立てるはずです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
リードコンサルティング株式会社
代表取締役 小谷川 拳次
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起業家。作家。投資家。
2009年、リードコンサルティング株式会社設立。デジタルコンテンツを主軸としたインターネット集客、電子書籍マーケティング、サブスクリプションビジネスのコンサルティング及びコンテンツ販売システム、自動ウェビナー販促システムの提供によるマーケティングオートメーション(MA)の導入支援を行う。ビジネス書作家としても活動。2018年からは投資事業を開始。2023年にはオウンドメディア『生成AIマーケティングの教科書』を開設。ChatGPTを中心とする生成AIマーケティングの専門家として、多数の専門記事を著者として公開している。日刊メルマガ【ChatGPT速習メール講座】では、5千人を超える読者にメールマガジンを配信中。
著書は『Facebookでお客様をどんどん増やす本』(中経出版/2011年)、『電子書籍を無名でも100万部売る方法』(東洋経済/2012年)、『小さな会社がお金をかけずにお客さまをガンガン集める方法』(KADOKAWA/2013年)など、累計50冊を出版している。
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2009年、リードコンサルティング株式会社設立。デジタルコンテンツを主軸としたインターネット集客、電子書籍マーケティング、サブスクリプションビジネスのコンサルティング及びコンテンツ販売システム、自動ウェビナー販促システムの提供によるマーケティングオートメーション(MA)の導入支援を行う。ビジネス書作家としても活動。2018年からは投資事業を開始。2023年にはオウンドメディア『生成AIマーケティングの教科書』を開設。ChatGPTを中心とする生成AIマーケティングの専門家として、多数の専門記事を著者として公開している。日刊メルマガ【ChatGPT速習メール講座】では、5千人を超える読者にメールマガジンを配信中。
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